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自分に素直に自然体で生きる 島崎昌美さんが20日から絵手紙展/つくば市筑波銀行本部
 つくば市の絵手紙作家、島崎昌美さん(76)が11月20日から30日まで、同市竹園の1-7の筑波銀行本部ビル2Fギャラリーで絵手紙作品展を開く。島崎さんといえば、絵描きとしてのこだわりから離れて絵手紙の世界で自己実現を図り、老後の生活を輝かせている絵手紙作家。「アートよりハートだ」と語る島崎さんの作品に触れて、老いについてのヒントを得てはどうだろう。

 島崎さんは1936年つくば市大曽根生まれ。中学時代に美術教師の影響を受け画家を志し、県立土浦一高で美術部に所属。武蔵野美術大学西洋画科を卒業、61年に絵画からグラフィックデザインに転向し、以後は長く出版関係の仕事に従事した。
 結婚し、子育て環境を変えようと帰郷してからは、デザインの仕事と平行して75年から油彩・水彩画の制作を再開。個展やグループ展を数多く開いてきたが、97年に脳梗塞(こうそく)で倒れたことが転機となり、絵手紙に取り組んだ。これまで県南を中心に絵手紙作品展を開く一方、作品集も出版して話題を集めてきた。

 島崎さんが絵手紙に描くのは庭の花や野菜、果物、魚、友人、家族関係など。かつて実母と妻の母親を介護する生活が長く続いたが、これが島崎さんの絵手紙表現の原点を形成した。日常の行動範囲はごく限られたのとは逆に、その表現欲求は自由に創作の世界を飛び回り、絵とマッチした味わい深い言葉が数多く紡ぎだされた。
 例えば、10年前の2002年に出版した第1作品集「あした転機になあれ」には鬼の絵がポイント。ごく自然に日常の介護や痴ほうの母親と向き合う自分自身の心を素直に映し出して評判を呼んだ。次第に言葉を失う母親と向き合う中で自分の心に潜む鬼に気づき、「福だけ欲しがる身勝手が己の顔を鬼にする」と、詩的な響きを持つ言葉が生まれた。
 島崎さんによれば、人間としての機能が壊れていく母親を前に、健常者の常識や思い込みは無力だ。逆に一緒に介護を楽しむことで、自分の中の鬼の部分が抜けていった。当時、母親に真剣に向き合うことで自分の生き方が見えてきたという。「朝、おはようと声を掛けると、すごくうれしい顔をする。見慣れた者がそこにいる安心感、言葉がなくても母だけが分かる情報交換がある。これが私にとって介護の基準。言葉のない言葉があるはずだ」と。

 このとき母親と同じ目線にまで降りて、演技ではなく心の底から一緒に日常を楽しみ、喜べる心の余裕を持てたことが、自分という存在を軽くした。これが島崎さんを芸術の呪縛から解放させる大きな転換点となった。「それまで苦しんで苦しんで絵を描いてきたが、自分ではどこか物足りなかった。芸術のつもりでやっていても、人の心に響いていかない。いつも通り一遍の“がんばってますね”で終わり…」
 自分が才能への限界を感じていたとき、非芸術的な扱いを受けている絵手紙に喜びを感じるようになり、次第にのめり込んだ。ついには自分が一番、自然体でいられる表現の根拠、自己表現の場となった。
 「近代芸術は、心情的なものは造形的なものの邪魔になると排斥・軽蔑する傾向がある。社会的に評価が低いとか、絵描き仲間が軽んじるとかは関係なく平然と10年やって、絵手紙の世界に安住できるようになっていた」
 「平和ぼけのじいさんが感じた味わいを少しでも絵手紙に染み込ませ、生活の中から見えてくるものを言葉に置き換えたい」。自分の人間性を裸にできた表現世界に、島崎さんは新たな可能性を見いだした。

 島崎さんによれば、芸術がポピュラー音楽だとすると絵手紙は演歌の世界、軽みの芸術に近いという。しかし、軽やかに見えていても遊び言葉の裏には、作者の人生観や人間観がのぞく。
 島崎さんは子どもの目線で描く図画と作文を目標とする。はがきからはみ出すようにダイナミックで味のあるタッチの絵とシンプルな言葉が作品に満ち、よくある啓蒙や説教からは程遠い。
 島崎さんは組織に縛られ、管理されることを嫌う。だから会社に帰属せず、フリーで仕事を続けた。絵手紙も家元のような協会組織に身を置かず、一貫して独立の立場を堅持してきた。
 「遅まきながら、60歳を過ぎて絵手紙でやっと自己形成ができて15年余り。無名の老人だから構える必要はない。出世しようと思わないから無理する必要がない。そういう気楽な状態でいるところに言葉が飛び込んでくる」
 「世間知らず、苦労知らずのコンプレックス人生だけど、貧乏でも一服のお茶が飲め、平凡に過ごせることが何よりの幸せ。等身大の表現手段で老後の自分の魂が輝き、弾んでいられる。最後は“ありがとう”の言葉で絵手紙を締めくくりたい」

絵手紙展、11月20日(火)から30日(金)。午前9時より午後3時。(注意、土・日・祝日は休館)筑波銀行本部ビル二階ギャラリー。029(859)8111。つくば市竹園1の7。駐車場は本部西側からの2・3階。

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