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転換期を迎えた本県公教育/中高一貫校が全県下に/県南には小中高一貫校の動き 茨城県
 教育の自由化や多様化ニーズを受け、学校教育システムが変化しつつある。本県でも既に中等教育で中高連携が進行しているのに加え、今年度は県内初の本格的な公立小中一貫校がつくば市に開校し、私立学校では県内初の小中高一貫校開設の動きも出てきた。6・3・3制の「複線化」の動きだが、制度的な縛りの少ない私立学校が受験を意識して先導してきたことに加え、導入の趣旨だったゆとり教育の見直しなどで受験競争とは一線を画している公立学校も影響を受け、転換期にある。

 「やっと県西地域にも悲願だった拠点となる本格的な公立の進学校が期待できる。成績優秀な生徒を県外に逃さずに地元できちんと教育できれば、将来故郷に貢献できる優れた人材育成の受け皿になる。医学部への進学にも力を入れるようだから、深刻な医師不足の解消にも期待が持てる」
 古河市の進学塾経営者は来春、同市の県立総和高校を母体に開校する中高一貫校(仮称・古河地区中等教育学校)の意義を強調する。栃木・埼玉両県境に位置する古河地区には私立進学高校や難関大学への進学実績を持つ中核的な公立進学校の受け皿が乏しく、交通の利便性もあり成績優秀者が県外の公立・私立進学校に流れる傾向があった。
 県教委が来春開校する中高一貫校では英語と数学の授業が毎日組まれ、難関大学や医学部進学を目指すなど、地域ニーズを反映させる意向だ。このため、受験生を抱える保護者の間には中高一貫校への期待が高まっている。

 ●受験エリート校でない難しさ
 全国的な流れとなっている中高連携の動きだが、もともと中高一貫校は私学の“専売特許”。保護者の根強い「学歴信仰」に支えられ、6年間の教育を5年で仕上げて大学受験に向けての教育を行い、東大合格者を多数生み出す一部の私立や国立の「受験エリート校」が、その典型例だ。
 しかし、公教育を旨とする公立では、それは許されない。文科省は当時のゆとり教育推進を受け、個性尊重や縦の人間関係を深めながら、国際・科学・人間教育を柱に「受験エリート校」化しないことなどを明文化して、1999年度から公立にも中高一貫教育の導入に踏み切った。
 中高一貫校には、一つの学校として一体的に一貫教育を行う中等教育学校と、同一の設置者が中学高校を接続する併設型、既存の公立中学と公立高校が教育課程の編成や教員・生徒間交流等で連携を進める連携型の3パターンがある。中等教育学校が一貫校の中核であり、緩やかなのが連携型、その中間に併設型が位置する。

 ●古河地区でほぼ全県下に配置
 本県では2003年度に県立小瀬高校(常陸大宮市)が、県内初の連携型中高一貫教育校としてスタート。周辺の3中学と地域密着型の緩やかな連携・交流を深めてきた。
 中等教育学校型の本格的な取り組みは08年度の県立並木高校(つくば市)への導入が最初。以来、同校は着実に地域の信頼を得て志願倍率は毎年4~5倍の人気を誇る。現在は五年次生までおり、来年度で中等教育学校に完全移行する。
 県教委は10年度に県央の水戸地区でも開校を目指したが、同時期に私立の中等教育学校が開設されたことから断念した経緯がある。
 今年度には県北地区で県立日立一高(日立市)の付属中が併設型中高一貫校として開校、冒頭のように来年度は県西地区にも中等教育学校が開校する。
 県教委の方針では、旧5通学区(県北・水戸・鹿行・県南・県西)に1校の割合で中高一貫校を配置。一定の人口規模や既存の公立中学や私立の中高一貫校との競合回避など地域事情を勘案すると、「古河地区でほぼ全県下に一段落する。受験一辺倒ではなく、学校現場が地域との連携を意識して自助努力で学校を盛り立ててほしい」(高校教育課)という。

 ●先行き不安が私学人気を下支え
 「家計は苦しくても教育投資は惜しまない。受験指導に力を入れる私学で学ばせた方が有名大学への進学には有利だから、無理しても我が子には私学教育を受けさせ、将来は安定した一流企業に就職させたい。この不況下で、そう願う家庭が増えている」
 県南の私立進学高校で生徒募集を担当する教員は指摘する。この教員によれば、私立が公立の補完役だったのは昔の話。「経済が落ち込めば公立に流れる」学校選択の図式が変化し、不況で先行き不安の時代だからこそ「我が子を私立に入れたい」と願う親たちが増え、私学人気を下支えしているという。
 特に首都圏の色合いを濃くする県南部では保護者の意識変化が著しいようだ。そうした流れで、一貫した指導体制で大学への受験指導を組みやすい一体型学校教育が支持されている。

 ●江戸取と開智が小学校設置の動き
 県南地域では私学が一歩進んだ動きを見せ、江戸川学園取手中・高校(取手市)が小中高一貫校を目指している。同校は毎年、東大や医学部系大学への高い合格実績を誇り、全国レベルの進学校として知名度を誇る。昨年3月に統廃合で閉校した地元の中学校の校舎と敷地を市から購入する方向という。
 学校法人開智学園(埼玉県さいたま市)も守谷、つくばみらい両市にまたがる区域に小中高一貫校の新設を計画している。同校も東大や難関私立大学に高い合格実績を誇る進学校で、既に小中高一貫校としての実績を持つ。未知数の要素はあるが、いずれも開校が決まれば県内初の小中高一貫校となる。
 江戸川学園は従来から、常磐線沿線の千葉県からの生徒を確保しており、開智学園も千葉県や埼玉県のTX沿線地域のニーズを受けた開設の動きだ。実現すれば、保護者の心情を巧みにとらえた私学が大学進学にウエートを置く学校運営にしのぎを削ることも想定される。
 保護者の間には「受験競争の低年齢化を一層助長し、子どもの生活を歪めかねない」との懸念の声や「県内で小学校から私立にと考える家庭は少なく、実際に運営できるのか」「高校段階では公立大国の本県の基本図式は変わらない」との冷ややかな意見も潜在している。

 ●小中一貫の春日学園に人気集中
 一方、教育先進地域のつくば市では、今年度から県内で初めて市内全域で小中一貫教育を導入。先鞭を切って市内初の施設一体型小中一貫校「春日学園」が開園した。人気が集中した影響で隣の小学校児童が約9割減少するなど想定外の事態となったが、市原健一市長は「先駆的な教育モデルに」と期待を寄せる。

 公教育は疲弊する財政状況の下で、少子化や生徒の多様化傾向を反映した難しいかじ取りを迫られている。教育の自由化や多様化が叫ばれて久しいが、「学力低下」が問題となった背景もあり、本県高校入試で長く続いた推薦入試が来年度から廃止されるなど、転換期に差し掛かっている。

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本県で初めて設置された、つくば市の並木中等教育学校。志願倍率が4~5倍の人気校で、来年度には中等教育学校に完全移行する

テーマ:ニュース・社会 - ジャンル:ニュース

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