元新聞記者による辛口コラム・エッセー、イラストと写真です。ご意見ご感想をお気軽にお待ちしています。(記事・画像の無断転載と無断複製・配布を堅く禁じ、万一発見した場合しかるべき処置を取ります)
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日本ダルク代表/近藤恒夫講演「ダルクの流儀」連載第1回
 ●どんなに困っても仲間を売らなかった

 日本ダルクの近藤です。今回、僕に与えられたテーマは「ダルクの流儀」です。流儀なんていう堅苦しい言葉は似合わないんだけど、ダルクらしさとか、ダルクの持つスタイル、やり方っていう程度の話だと思ってください。結論を言えば、ダルクは依存症について手本も何もない、ないない尽くしのこの国の風土で生まれた、薬物依存の問題を抱える当事者たちの自助活動なんです。
 僕は社会性がないからか、(薬物依存症の)仲間たちから「きょう一日、神様にお任せして生きているのが、あなたの一番いいところだ」と信じられてきたけど、実は「先のことをあまり考える能力がなかった」ということが、どうやら自分でも分かってきました。
 そうして「きょういちにち」「今日一日」と言って、ダルクはあっと言う間に25年。僕も「今日一日」「今日一日」とクスリ(覚せい剤)を止め続けて30年たちます。きょう一日を積み重ねるということは、実はこういうことなんだよということを、ようやく70歳に手が届く段階になって分かってきた。なので、今も若い者に負けないよう一生懸命に全国を駆け回っています。

 ●国家からカネもらわなくてよかった

 僕はダルクの活動が素晴らしいというつもりはないけど、曲がりなりにも25年たって、昨年春には国のトップに位置する大臣にも呼ばれた。もっとも、その大臣はすぐに交代しちゃったけど…。とにかく、依存症のケアでは米国よりも30年は遅れているこの国で、やっと大臣クラスの所までダルクの名前が届いたんだ。
 それはうれしいことなんだが、25年たっても全国のダルクの建物なんて吹けば飛ぶようものばかりだよ。倉庫だったのを借りてるから、ダルク第1号の東京ダルク(東京都荒川区)の建物なんか、あちこちに穴が開いている。トイレも小さな豆電球。狭い階段を上がった内部は暗いアヘン窟みたいだけど、その大臣のすぐ下にいる役人がダルクを見たいっていうんで、わざわざ連れて行ったんだ。
 で、僕はその役人に、こう言ってやった。「いやあ、国家からカネをもらわなくてよかった」ってね。ダルクは60カ所以上、関連施設を含むと今や70カ所近くにまで増えたけど、僕は一貫して国家からカネをもらって魂を売るってことをしてこなかった。この25年間いろんなトラブルがあったけど、一度たりともウチの人たち(ダルクの入寮者)を警察に売ったことはない。それがぼくの誇りです。

 ●ダルクは回復者にとって安全な場所

 そりゃあ、警察を呼べば簡単に解決する問題だったかもしれないけど、僕はどんなに困っても警察を呼ばなかった。110番通報しなかった。中でクスリを売っているやつだとかの凄い奴ばかりだったけど、いつか気付いてくれるんじゃないか、と。それがお互いの信頼なんだ。薬物依存はみんなとの信頼に基づいた回復が大事なんです。
 警察に連絡したらトラブルは簡単に解決するのかもしれないけど、もしそういうようにして僕に通報されて警察に売られた人たちは、絶対にダルクに戻って来ませんよ。「二度とあんなところに行くか」ってね。誰だって安全でないところには行かないですよ。
 人がそこに居ついて何かしようとするには、その場所が安全でなければいけない。それが回復にとって一番大切なことです。ダルクは薬物依存からの回復を目指す人にとって安全な場所だったから、仲間たちから信頼されてきたんだと思う。
    
 ◇◇

 依存性のある薬物(覚せい剤、麻薬、処方薬他)やシンナー、さらにアルコール、ギャンブル、摂食障害など依存症問題をリードしてきた薬物依存症民間回復施設「DARC(ダルク)」が、発足から25年の歴史を刻んだ。創始者の近藤恒夫さんが最近の講演で、その歩みや新たな課題などに触れた。その講演記録を13回に分けて掲載します。

【近藤恒夫(こんどう・つねお)】1941年(昭和16年)秋田市生まれ。覚せい剤を使い身を持ち崩すも再起を誓い85年に日本初の薬物依存民間リハビリ施設を開設(東京ダルク)。92年には結城市に結城ダルク(現、茨城ダルク)を開設した。東京弁護士会人権賞、吉川英治文化賞を受賞。著書に「薬物依存」「拘置所のタンポポ」など多数。現在、日本ダルク代表、NPO法人アパリ理事長。

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