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回復と成長の証言史を出版/波乱の半生で薬物依存の実相明かす/仙台ダルクの飯室勉さん/つくば市の実家で母親も祝福
 本ブログでも前回触れましたが(仙台ダルクフォーラムでNPO法人理事長の長嶋さんがPR)、以前からの友人でもある仙台ダルク代表の飯室勉さん(46)が、自らの回復過程を赤裸々に描いた自叙伝「放蕩息子―ある薬物依存者の記憶」を刊行しました。
 飯室さんは横浜市の出身ですが、家族は仕事の関係から茨城県に移り、母親の光江さん(78)は、つくば市に住んでいます。筑波山の中腹の見晴らしのいい自宅には、取材を兼ねて2、3度おじゃましたことがあります。その光江さんは「ここまで回復し成長できたのは周囲の支えがあったから。いつまでも感謝の心を失わないで」と謙虚な祝福のメッセージを送っています。
     ◇
 飯室さんは、施設内や外部の自助グループミーティングで使う愛称(=アノニマスネーム)を、本名の「ツトム」で通しています。全国に60近くまで増えたダルクの代表や施設長の中でも“話芸”ともいえる巧みなトークを駆使し、各地のフォーラムなどで会場を沸かせる人気者の一人です。
 刊行された自伝によれば、ツトム(以下、親愛の情を込めてアノニマスで呼びます)は非行に走った少年時代のシンナーに始まり、間もなく覚せい剤に依存。14年に及ぶ依存症から次第に幻聴幻覚が強くなり、家族の通報で警察に逮捕されました。刑務所体験を経て、実家がつくば市内にある縁で結城市の茨城ダルクで回復した経緯があります。以後は仙台ダルクで、薬物依存症に苦しむ仲間たちの回復支援活動に人生を捧げています。
 今回、そうした歩みの集大成が、ツトムにとって初の自叙伝の同書に結実したわけです。支援会メンバーで東北大大学院研究科博士課程に在籍する赤井悠蔵さん編集作業を担当して作品化されました。当事者による貴重な薬物依存の回復証言史に仕上がっていると思います。
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 ツトムは、勤勉で実直、規律正しい家庭の下で育ちました。野球で優れた実力を発揮し、人格的にも評価の高かった7歳上の兄のプレッシャーなどから、少年時代から心に満たされない空洞ができていたと言います。ツトムの少年時代の証言は、ごく健全に見える家庭にこそ薬物依存の落とし穴があることを教えています。
 同書には、ツトムが非行や犯罪に手を染めながら、何度も両親や兄が先回りして、あるいはトラブルの事後処理などの尻ぬぐいをしてきた姿もきたんなくつづられています。結果的に家族がツトムの依存症を悪化させ、家族もまた共依存の病であることを物語っています。
 今回ツトムは墓場まで持っていく“秘密”を明かしています。覚せい剤依存に苦しむ中で、生涯にわたって背負い込むことになる実家近くで起こした交通事故についてです。過失致死だったのですが、一生治らない薬物依存症ともに、逃げずに重たい原罪と向き合う姿勢を貫いています。これもダルクでの回復してきた証しであると僕は考えます。
 ダルクは単に薬物依存症からの回復だけでなく、人間としての成長をも促します。当事者主義の活動として自分を棚に上げずに、他者よりも自分を問題にして、まず自分を変えていくプログラムがダルクの特徴です。他人と過去は変えられなくても、自分の進むべき未来は変えられます。
 そうして社会人としての自覚はもちろんですが、自分の内面を掘り下げ、慈愛や他人への思いやりを深くしていきます。「笑い」を取ることにたけていると思われがちのツトムですが、しっかりと回復の道を歩んでいることをうかがわせます。
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 ツトムは獄中体験などを経て底つきをし、ダルクにつながってからは「茨城ダルクの優等生」(岩井喜代仁代表)と評価され、沖縄ダルクなどを経て順調に回復しました。スタッフ研修で仙台ダルクに移った直後、施設責任者が薬物再使用で責任者をリタイアし、別の中心スタッフも覚せい剤を使用して逮捕され、新聞でも報じられた仙台ダルク最大の危機の時期がありました。
 ツトムはこれらの試練を乗り越え、施設長としての資質を開花、実力を身につけ、大きく成長していったのです。今ではダルク創設者の近藤恒夫さんらの信頼も厚く、今後はダルクを主導していく第2世代の旗手として活躍が期待されています。同書では、ツトムなりに今後のダルクの方向性についても言及しており、その優れた見識とビジョンに僕は共感を抱きます。
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 ツトムは「今回、人生の棚卸しの意味を込めて本を世に出した。回復できるという希望のメッセージにつながれば」と話し、母親の光江さんも「薬物をやめ続けらえるのは周囲の人に支えられているから。感謝の気持ちで今日一日を積み重ねて」と労をねぎらっています。
 どうか、多くの人に読んでほしいと思います。形は自費出版で初回は2000部を刊行したようですが、残部が少なくなっているようです。追加製作も視野に入れているようですが、また版をつくり直さなければならず、出版は財政状況の苦しい仙台ダルクにとっては重荷です。本が売れて初めて制作費がペイできるとのことなので、多くの人に購入してほしいなあと、ツトムに代わってお願いする次第です。
 自叙伝「放蕩息子―ある薬物依存者の記憶」は定価1600円(税込)。問い合わせは、特定非営利活動法人「仙台ダルク・グループ」(電話022・261・5341)まで。
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 以下は、あるダルク関連施設に書いたコラムです。かなり内容がだぶっていますが、僕のツトムに対する思いが盛り込まれていますので、あえて再掲載します。

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 仙台ダルク代表のツトム(本名・飯室勉)さんが、自叙伝「放蕩息子 ある薬物依存者の記憶」(制作編集は赤井悠蔵さん)を出版した。ダルクの真骨頂である「恥をかいた分だけ成長する」を実証するように、彼の回復ぶりがうかがえる貴重な一冊だ。ダルクには縁のない一般市民にも、ぜひ一読をお勧めする▼というのも、彼が薬物にはまる過程を読むと、大なり小なりどこの家庭でも思い当たるふしがあるからだ。ツトムは勤勉で実直な規律正しい健全家庭の下で育った。人格的もスポーツ面(野球)でも優れる7つ年上の兄の存在がプレッシャーになり、自己評価を高められなかった。少年時代から満たされない心の空洞が広がり、それをシンナーや覚せい剤で埋め合わせた▼そして家族も世間体を重んじる立場から、非行や犯罪によるツトムのトラブルを尻拭いし続けた。そのために費やした金額は想像を絶するに違いない。家が経済的に豊だとしても、ツトムには精神面で重い桎梏になっているに違いない。家族もまた共依存の病にあることを物語っている▼ツトムは茨城ダルク(岩井喜代仁代表)を主舞台に回復した。「茨城ダルクの優等生」(岩井代表)と評価が高く、日本ダルク代表の近藤恒夫さんらに続くダルク第2世代の旗手の一人。何といっても講演などでのトークが持ち味だ。仲間たちの間では自らをピエロのように位置付け、その場の引き立て役を演じる気配りの人でもある▼それだけに独り自分と向き合う場面では、人一倍悩みも深かったろうと思う。でも、そうした苦しみもやっと報われるようだ。生涯にわたる良き伴侶を得たことを同書の中で明かしている。まさにハイヤーパワーがツトムに与えた幸福だろう。でも、彼は自分の幸せに浮かれてはいないようだ▼過去の壮絶な物語に隠れてしまいがちだが、第2世代の立場からダルクの今後について一定のビジョンにも触れている。多様化傾向の入所者、これまでの薬物依存とは異なる重症の重複障害者の増加、公的援助の受け入れによるスタッフの負担拡大など、ダルクを巡る新たな状況変化への対応を提案している▼型にはまらないダルク本来の持ち味を生かしながら、生活保護制度に頼る比率が増加し続ける現実の中で、どのように運営資金をねん出し、仲間たちが安全に安心して回復プログラムに取り組めるようにするか、どこのダルクでも施設の安定的な運営に腐心している。そのヒントがツトムなりの経験と判断で導き出されている▼本の帯には「クスリを使って生きることも死ぬこともできなかった14年。プログラムを通して、回復を学んで15年。俺は今、生まれ変わって15歳になった」とあるように、希望につながる珠玉の言葉がちりばめられている。(定価1600円=税込、連絡は仙台ダルク・グループ=電話022・261・5341)

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自叙伝「放蕩息子―ある薬物依存者の記憶」を刊行したツトムこと飯室勉さん

テーマ:写真日記 - ジャンル:写真

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